本の感想 また、桜の国で

 第二次大戦前のポーランドの日本大使館に赴任した外務書記生 棚倉が主人公の物語。ポーランドのワルシャワで起きた占領、差別。それに立ち向かうポーランド人、ユダヤ人、そして、ドイツ人とユダヤ人の混血のヤン、父がロシア人(スラブ系)、母が日本人である棚倉が、その凄惨な状況をいかにくぐりぬけようとしていくか…、読んでいて緊張する小説でした。

 戦争を回避させることに奔走する外務省職員たちの仕事、明治時代から続く日本とポーランドとの関係、ドイツ軍がいかにワルシャワを攻めていったか、イギリス、フランス、ソ連との関係など、まったく、知らないことばかり。

 ナチス・ドイツがポーランドに攻め込む暴挙をイギリス、フランスやその他国際社会は非難しているから、助けてくれると思ったのに、ドイツ上空にイギリス空軍が行ったけれど、攻撃はせずにビラを撒いただけとか、ナチスによる行為は、連合国でも報道規制がはられていて報道ができなかった…とか。自分から遠い国のことや自分に余裕がないときや自分の国に都合が悪い場合には、かの国での出来事がいかに悲惨でも手を差し伸べることできない、今の時代も起きていることかもしれません…。

 危険な場面に出くわしたときの自分の判断が道徳と反する場合の心理など、心苦しくなることもありますが、登場人物たちと主人公の交流がさわやかなので、読後感はよい本でした。

お気に入り度: ★★★☆☆

須賀しのぶの本の感想